この記事では海外移住をする場合、日本の住民票は抜く方がいいのか、それともそのまま実家住所などに残しておく方がいいのかを考察した記事になります。
リタイアメントなど新しい生活を求めて以外にも、海外駐在など社命による海外転勤もあり得るこの時代、いざ海外移住となったとき、間違った対応をして損をしてしまうといった事が無いよう、最後まで記事をお読みください。
海外に移住する場合、住民票はどうしたらいいのでしょう?
住民票を抜いてしまったら、何か損をしてしまうのではないだろうか?
逆に残しておいたら、問題があるのだろうか?
結論を言いますと
年齢がまだ若く、収入があるのでしたら住民票は抜いてしまった方がいいでしょう。
しかし、リタイアメント移住で収入が年金程度しかない方は、抜かない方がいいかもしれません。
その理由ですが、住民票を残しておくと所得税や住民税、年金支払いの義務が発生するからです。
一方住民票を抜いてしまうと国民健康保険が使えなくなるので、海外での医療保険に加入できない高齢者は住民票を残しておいた方がいいかもしれません。
この記事では海外移住時に住民票を残した場合と抜いた場合のメリットやデメリットなどの情報をシェアしています。
この記事を読めば、海外移住時に住民票をどうすべきかがわかります。
移住時にはいろいろな手続きがありますので、事前に住民票の取り扱いを決めておけば、その場で悩むこともなく、スムーズに移住手続きができるでしょう。
住民票(じゅうみんひょう)とは、日本において市町村と特別区で作成される住民に関する記録。
各市区町村ごとに住民基本台帳にまとめられていて、現住所の証明、選挙人の登録、人口の調査などに利用されている。詳細は住民基本台帳法で規定されている。
Wikipedia住民票より抜粋
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転出届の提出の他、海外移住時にはやらなくてはいけない手続きが沢山あります。
それら手続きをまとめた記事がありますので、海外移住を計画されている方は手続き忘れ防止のためにもぜひご一読ください。
目次
住民票の法的な取り扱い
法律では、1年以上海外に居住する場合は、転出届を提出し住民票を抜かなくてはいけない事になっています。
ただし、住民票を抜かずに1年以上海外に居住していたとしても罰則はありません。
事実、海外駐在の会社員の中には、家族などの都合により住民票を抜かない方もいます。
また、1年のうちに何日か帰国していれば居住実績があるとみなされます。
(本来は1年のうち182日以上滞在している場所が、居住地域とされることが多いです)
法的には海外移住時には地方自治体に転出届を出し、住民票を抜かなくてはいけないのですが、実際住民票を実家住所などで残しておいても法的に罰せられることはありません。
住民票をそのままにしておくと税金がかかる
住民票を抜かないと、所得税と住民税がかかります。
ただし、所得税、住民税は前年度の国内所得に対して課税されます。
その為、住民票を抜かなかったとしても、前年度国内所得がなければ税金は発生しません。
国内所得が全くない方なら、住民票を残しておいても問題ないでしょう。
ただし、YouTubeやGoogleアドセンス、アフリエイトなどのWeb収入、ネット通販やオークションの売上などは、国内収入とみなされ、課税対象となります。
また、65歳以下で108万円、65歳以上で158万円以上の年金収入がある方も所得税が発生します。
(金額は2021年度の場合)
年金受給者は住民票を抜いたら、租税条約に関する届け出書を年金機構を通じて税務署に提出してください。
この届出書を出しておけば、年金に対しての国内所得税はかかりません。
リタイアメント移住者の税金や確定申告について、以下の記事で詳細説明してありますので、興味のある方はぜひご覧ください。
バリ島移住した年金生活者の確定申告
以上の事から、国内所得や年金収入がある方は住民票を残しておくと税金がかかる場合があります。
注意
国内で労働して得た収入や不動産やアパートなどの収入等は国内源泉所得と言って、住民票を抜いた非居住者であっても所得税が課税されます。
そのような収入がある場合は、確定申告が必要となります。
住民票を抜いたら年金の支払い義務は無くなる
住民票を抜いたら、自動的に年金の支払い義務は無くなります。
つまり年金の請求は来なくなる。
ただし当然、支払額も少なくなるので、受給額も少なくなります。
受給額が少なくなるのは困るから、年金の支払いを続けたい。
という方のために、年金には任意継続という制度があります。
これは住民票を抜いてしまっても、引き続き年金の支払いを続けられるという制度です。
また、年金受給ですが住民票を抜いてしまっても、受給資格は無くなりません。
キチンと手続きをすれば、年金を受け取ることができます。
つまり、年金に関しては住民票を抜いても残しておいても変わりは無いと言えます。
住民票を残しておかないと健康保険が使えない
住民票を抜いた時点で国民健康保険は使えなくなります。
国民健康保険を脱退するということになります。
もちろん、保険料の支払いは無くなりますが、国内で病院に行くような場合、全額自己負担となります。
ただし大企業にお勤めの方は、国民健康保険ではなく、企業の健康保険組合に加入していると思います。
派遣、駐在など社命により海外移住、長期滞在される場合は、企業の健康保険が対応していますので、住民票を抜いても保険に関しては問題ないと思います。
国民健康保険が使えなくなるのは困る!
と思われがちですが、もともと国民健康保険は海外ではその場で使うことはできません。
海外での医療保険には、海外旅行保険か保険会社の医療保険を使う事になります。
海外での医療保険に関しては以下の記事で解説しておりますので、気になる方はご一読ください。
バリ島移住、安心して暮らすには医療保険加入がおススメ
移住先で医療保険に加入できるのであれば、日本の国民健康保険は必要ないので、住民票は抜いても構わないでしょう。
ただし、年齢や在住許可などの関係で移住先の医療保険に加入できない場合は、国民健康保険は残しておきたいもの。
その場合は住民票を抜くことはできないですね。
もちろん、日本の国民健康保険を使う場合は、無収入や年金収入だけであっても保険料支払いは必要です。
住民票を抜かないと介護保険の保険料支払い義務が発生する
要介護の高齢者向けの介護保険。
40歳を超えると、この介護保険料の支払い義務が発生します。
40歳から65歳までは国民健康保険の保険料に含まれます。
住民票を抜かずに、国民健康保険に加入していれば、自動的にこの介護保険料を支払っていることになります。
65歳を超えると、年金から自動的にこの介護保険料が天引きされます。
保険料は年金額や地域により変わりますが平均で月6,000円。
年で72,000円が保険料として徴収されます。
この介護保険、住民票を基に徴収されますので、住民票を抜いていれば、支払い義務はなくなります。
住民票を抜いてもマイナンバーは有効
海外中のため転出届を出して住民票を抜くとマイナンバーは失効となりました。
しかし、マイナンバーの法律が変更となり、2024年5月27日からは住民票を抜いてもマイナンバーはそのまま有効となるようになりました。
ただし、住民票を抜く手続きをする際に、マイナンバーの住所変更手続きを行い、マイナンバーカードの住所欄は「海外転居」となります。
これまで海外移住をするとマイナンバーが失効するため銀行口座の新設ができませんでしたが、マイナンバーカードがあれば、銀行口座の新設ができるはず。
ただし「海外転居」となっているマイナンバーカードで口座が新設できるかどうかは各銀行の判断になります。
銀行によってはマイナンバーカードがあっても、「海外転居」の場合は親切を拒否するケースも出てくるでしょう。
「海外転居」となっているマイナンバーカードでも身分証明には十分なります。
その為、従来マイナンバーカードの提示が必要だった海外送金サービスも、住民票を抜いた後でも可能となります。
(銀行の判断により、不可の場合もあるので、事前に銀行に相談してください)
事情により、銀行の海外送金ができない方でもWiseといったオンライン送金サービスなら利用ができます。
Wise(旧トランスファーワイズ)の海外送金に関しては以下の記事で解説していますので、気になる方はぜひご一読ください。
バリ島送金トランスファーワイズ海外送金
すでに転居届を出し、海外移住されている方も海外公館(領事館等)に申請すればマイナンバーカードが作れます。
ただしマイナンバー制度が始まった2015年10月5日以前に海外移住された方はそもそもマイナンバーがないので、マイナンバーカードは作れません。
住民票を残すか抜くか、結論は
海外移住時の住民票の取り扱いについてまとめてみます。
- 住民票を残しておくと、収入や年金に課税されることがある
- 住民票を抜いても年金の支払いや受給に問題はない
- 住民票を抜くと国民健康保険が使えなくなる
- 住民票を残しておくと年金から介護保険料が天引きされる
- 住民票を抜いてもマイナンバーは有効でカードも所有できるので金融サービスも受けられる
海外移住時に住民票を抜いても、大きな問題は発生しません。
ただし、年齢などの条件で移住先の医療保険などに加入できない方は、国民健康保険の利用のため住民票を残しておいた方がいいかもしれません。
もちろん、その場合は、税金や健康保険料、介護保険料の支払い義務が発生しますので、慎重に検討すべきです。